スタッフレビュー詳細
スマホに刺すだけ!コネクタ要らずの優等生!
インナーイヤー型の旨味を存分に。エントリー価格かつ、USB-TypeCコネクタ搭載でご堪能いただける万能イヤホンのご紹介です!
レビューに際して様々な楽曲を聴いてみた結果、こちらのイヤホンのキーワードは「空間表現」と「ボーカル(中音域)」であるとの見解に至りました。
まず、現在のスタンダードとも言えるカナル型とは一線を画す雄大な空間描写は、価格を考えずともお見事です。そしてその表現はただ広いだけでなく、特に左右に顕著に広がっていく独特のものです。ただ、大きいホールのような反響感や残響感といったものは少なく、例えるなら“野外ステージで音が広がり、抜けていくような極めて開放的なサウンド”といったイメージです。この音の広がりの独自性が、私を含めたインナーイヤー型ファンが絶えない大きな理由であると考えています。本機もエントリー価格ながらその特徴を色濃く感じられました。
それだけ豊かなステージを感じさせつつも、全体が薄味になることは決してなく、特にボーカルはしっかりと中央に、確かな存在感を持って位置していました。歌声の雰囲気としては、正面に音の発生源があり、そこから自分に向かって放射状に広がってくるようなスケール感がありつつも、角のない仕上がりとなっています。この包み込まれるような柔らかい音像に、自然と心が安らぐような感覚になれたことを記憶しています。総じて非常に心地よい音楽体験を提供してくれるタイプのイヤホンです。
各帯域のパワーバランスはと言うと、主役はやはり中域以上であると言えます。伸びやかな高域とあたたかなボーカルの調和が、明るく穏やかな空気を演出しています。対して低域は量感こそ少なめですが、リズムの取りやすい軽快な鳴りをしており、こちらも楽しげで好印象です。
また、これはサウンドとは別の観点からの考察なのですが、本機はインナーイヤータイプのイヤホンの中でも、かなり開放型に寄った使用感だと思います。私の中で、カナル型と開放型の中間地点に位置しているのがインナーイヤー型というイメージがあるのですが、本機の装着感の軽さ、外音の聞こえ具合は明らかに開放型に寄っている印象です。ですので、小音量で音楽をかけながら別の作業を行ったり、家事をしながら家の様子を把握するのに非常に有用であると思います。
そして、イヤホンの耳に当たる部分には金属素材が使用されており、ひんやりとした耳当たりが個人的には好きでした。ただ、こちらに関しては好みが分かれるところだと思いますので、もし気になる方がいらっしゃいましたら、付属のスポンジ製イヤーパッドの装着をお試しください。そうすることによって着け心地が一段と優しくなったと感じていただけると思います。
また、イヤーパッド装着によって外音の入りも若干抑えられ、一般的なインナーイヤー型程度になりますので、外の音が聞こえすぎて気になるという方にもこちらの装着をおすすめします。
その他にも、ハンズフリー通話などが可能なイヤホンマイクの搭載があったり、遂にUSB-Cが搭載されたiPhone15シリーズでの動作も確認済み(2023年9月時点)であるなど、利便性がしっかり担保されているのも嬉しいポイントです。
総評としては、サウンドに迫力より安らぎをお求めの方や、ながら聴き用途でもお使いになりたい方、エントリー価格でインナーイヤー型イヤホンをお探しの方、視聴環境がスマートフォン中心の方、こういったニーズのお客様にはうってつけのイヤホンだと思います!
個人的には、この開放型のような使用感と、伸びやかで柔らかい音の鳴りの相性が抜群に良いと感じました。休みの日に一日中着けっぱなしでゆったりめのジャズなんかを流したいなという思いになりました。
「HP-NEL22C」、是非一度ご試聴してみてください!
量感イメージ
この商品に対する
他のスタッフのレビュー
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かやちゃん
@e☆イヤホン 秋葉原店
radius
HP-NEL22C
レッド
¥4400 税込
超軽い!気軽に音楽鑑賞もゲームも‼
お求めやすいモデルから本格的なモデルも手がける日本のブランド「radius」から販売された「HP-NEL22C」は、Type-Cに直接接続可能なお手軽インナーイヤー型イヤホンです。 今回はゲームで使用することを想定したゲーマー目線でもレビューします! ・外観と装着感 ゴムで耳の穴を塞ぐタイプのカナル型イヤホンと違い、耳を完全には塞がず快適な装着感を目指した「インナーイヤー型」のイヤホンです。密閉されていないので外の音が入るなどデメリットもありますが、圧迫感がなく長時間つけていても疲れない点はゲーマーにとってメリットです。加えて本体が非常に軽量のため、一般的なイヤホンよりもさらに疲れにくい印象です。 ・音 耳を完全に塞ぎきらないインナーイヤホンの特性を活かした、スッキリとした爽やかサウンドです。空気を含んだ広がりのあるサウンドはやみつきになりそうです。低音の量感がやや少ないため、ロックやEDM調の楽曲よりも、ゆったりとした楽曲との相性が特にいいと感じました。 また、音がどこから鳴っているかの表現力や定位はやや掴みにくく、FPSといったゲームよりもRPGや音ゲーなどに向いていると感じました。 RPGではBGMやキャラクターボイスを楽しみやすかったです。さらに、スマホ向けの音ゲーで実際に試してみたところ、低音が少ない分ボーカルやその他の楽器の音が聴きやすく、それらに合わせた譜面がプレイしやすかったです。音が軽やかで耳への負担が少ないので、長時間プレイしていても疲れにくい印象でした! ・機能面 Androidやタブレット、iPhone15等で採用されているType-C端子に直接繋げられるので、変換ケーブルが不要で快適です。ノイズを抑制する効果もあるので、音もクリーンで◎です。 店頭では実際にお試しいただけます! 機会がありましたら是非お越しくださいませ! 試聴楽曲: ナノウ 「ハロ/ハワユ」 カンザキイオリ「25時の情熱」
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もりぞー
@e☆イヤホン 名古屋大須店
radius
HP-NEL22C
シルバー
¥4400 税込
軽い装着感で、どの場面でも使いやすいイヤホン!
本体が非常に軽く、実際に装着してゲームをしていたら、耳への負担どころか着けている事を忘れるほど快適でした。 耳穴の下側で本体を支えるため、耳の形によっては装着が難しい場合があるかもしれません。ただ、装着して頭を多少左右に振っても耳から外れることはなく、安定感のある着け心地でした。 音質としては、低音域がやや控えめで中音~高音域寄りのバランス。声が非常に聴き取りやすいので、ボーカルを重視される方や通話・会議にも使いやすいと思います。 USB-Cコネクタのイヤホンなので、既存のスマートフォンやタブレットはもちろんのこと、iPhone15やNintendo Switchにもばっちり対応しています。また、耳を密閉しないインナーイヤー型なので、ながら聴きにも気軽に使える機種をお探しの方にオススメです! 試聴環境 iPhone 15(iOS 17.1.1) 試聴楽曲: FOOT STEPS/北代 桃子
このスタッフの他のレビュー
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えんじ
@e☆イヤホン 秋葉原店
MONDO BY DEFUNC
モンド フリースタイル【~12/31まで! 応募、抽選でポスタープレゼントキャンペーン!】
トランスペアレント
¥10970 税込
まさにフリースタイル!ファッションも音楽も思うままに!
ファッションと音楽で、生活に爽やかな風を吹きこむアイテム「モンド フリースタイル」のご紹介です! 音楽レーベル「Monza Music Entertainment」、大手ストリートカルチャープラットフォーム「Dopest」、オーディオブランド「defunc」、スウェーデンのストリートカルチャーの雄である3社が手を組み満を持してリリースしたということだけで、我々の興味を惹くには十分です。そのため、肩書きはヘッドホンですが、その魅力はサウンドのみに留まりません。 まずはその現代的且つキャッチー、キュートなビジュアルにご注目いただきたい! 出自からもおわかりの通り、ストリート系のファッションとの親和性は間違いありません。普段からキャップやパーカーなど、カジュアルなアイテムをご愛用の皆様には、是非ともプラスワンとして日常のコーディネートに溶け込ませていただきたい逸品です。 一方、シャツやジャケットがメインのフォーマル寄りのコーディネート中心の方、レザーなど重ための質感のアイテムをお好みの方にもハマれるポテンシャルがあるのがこのヘッドホンの凄いところ! 見た目に特徴がある分、外しのアイテムとしてしっかりと活躍してくれます。 そしてそれが違和感になりすぎないのが、キャッチーなビジュアルに対してサイズ感はコンパクトであることの恩恵です。意外とどんなスタイルでも自然に身につけていただけます。 また、添付画像のトランスペアレントのカラーも現代的で素敵ですが、それ以外のカラーも各々魅力的で捨てがたいです。幅広いファッションに合わせたくなる、そんな仕上がりです! サウンドは軽やかでありつつも確かなベースラインを聴かせてくれるので、音楽をラフにノリ良く楽しめます。ドラムのハイハットやスネアの鳴りが気持ちよく、刺さり感も少ないのが好印象です。金管全般の解像度感も担保されていて、ミドルテンポ辺りのジャズが得意だと感じました。 また、ボーカルの位置が近く、ピアノやギターがとても明瞭で聴きやすいのも重要なポイントです。オンイヤー型の特徴である抜け感は一定量あるものの抜けすぎている感じはなく、残響感、余韻感にも長けていて心地良いです。そういった雰囲気の部分が抜けてしまわないのがサウンド面での個人的最大の推しポイントかもしれません。 上記の特性の代償としては、オンイヤー型特有の空間の広さに期待しすぎると、「意外と抜けていかないな?」という感想を持たれる可能性もあるところでしょうか。とはいえ、低域の物足りなさを指摘されがちなオンイヤー型でありながら、抜け感に寄りすぎていない本機はそれらの帯域もおざなりになっていないのが嬉しいです。 また、余韻や残響をもたらしてくれる反面、そのサウンドの特性上、テンポが速すぎたり構成が複雑になりすぎるとそれぞれが鳴りきらず、平面的な音に聴こえてしまう時があります。そのため、かける音楽はある程度選ぶ必要がある印象でした。迫力のあるサウンドや、音数の多い楽曲が好みの方は、同メーカーから同時リリースの「モンド オーバーイヤー」をお試しいただくのも一案かもしれません! 以上、「モンド フリースタイル」のご紹介をさせていただきました! 軽やかにノれる音と、現代的なお洒落を同時に身に纏うことができる本機は、どなたにも自信を持ってオススメできます! 是非お試しを‼
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えんじ
@e☆イヤホン 秋葉原店
ORIVETI
GRAND ORIVETI Supremacy
¥330000 税込
テーマは「豊潤」。音楽の深淵へと誘われるアダルトな実力者。
ゆっくりと目を閉じて音楽に身を任せるとしたら、このまま二度と目を開きたくない…そんな心持ちにさせられた理由を紐解くことで、このイヤホンのレビューとさせていただきます。 まずはその解像度の妙に注目しました。帯域バランスがとても緻密で美しく、過不足のない鳴り方をしており、そこだけに注目すれば、モニターイヤホンのような実力があるように感じます。しかし、それらに見られやすいカラッとした雰囲気はまるでなく、適度に水気を含んだしっとりとしたサウンドが、いい意味で分析的な部分への執着から解き放ってくれました。 音色としてはクール寄りの印象を受けますが、木製素材が使用されている恩恵か、その中でも随所に感じられる暖かみが憎いです。偏りのない中でも低域の印象は比較的強く残ります。ただ、その文言から思い浮かべるような「強さ」ではなく、「重厚感」という表現が相応しいと思います。 他帯域より気持ち後ろに定位していますが、引っ込んでいる感じは少しもなく、それどころか横方向に取られた空間も相まって非常に豊かで存在感があります。 アタック感や物量で攻めるというより深みや響きの印象が強く、非常に滑らかで上質な仕上がりだと感じました。特にコントラバスの鳴り方は、弦に触れた瞬間から放れ際の空気感までしっとりと描写されていてピカイチです。 一方で中高域は、距離は近い一方で刺さりは一切ありません。優しさと明瞭さの両立がお見事です。鳴り出しから鳴り終わりの速度感も絶妙で、管楽器の出だしのスピード感からの消え際の微かな余韻、「スピードのフォール」が雰囲気を演出します。 いわゆる“ボーカルホン”としてもその能力は高く、歌声が近いのに窮屈にならないところが素晴らしいです。全帯域を通して力感で勝負していないことと、声よりも上の高域が更に近めに設定されていることが、圧を感じさせないことに一役買っているのだと思います。 中高域の音の立ち上がりや分離感には目を見張るものがありますが、ソリッドというほど鋭利な感触はなく、かといってもったりねっとりした感じでもないのが絶妙です。適切プラスアルファくらいの湿度感が艶やかで、色気があります。 サウンド全体に余裕があるので見落としそうになりますが、空間は特別広いとは感じません。むしろある程度コンパクトにまとまっているように思えました。それでも、窮屈さがどこにもないので何のストレスにもなりません。例えるなら、小さめのライブハウスで贅沢にジャズを楽しんでいる時のような充実感があります。特別な時間を演出してくれるような鳴らし方で、ワインを合わせたくなるような仕上がりです。 この空間のコンパクトさでこういった感覚になれる音は珍しいのではないでしょうか。緻密な音響設計の賜物と言うべきでしょう。個人的には、広さが控えめなため、生楽器との相性はいいけれど、クラシックよりは中編成くらいまでのジャズがリアリティを持って表現できているように感じました。とにかく弦楽器の深み(立体感)が印象的で、余韻と響きの表現が豊潤で高級感があります。 ここまでジャズなどの生楽器系にばかり言及してきましたが、根本的に解像度が高く、帯域バランスも整っているため、ジャンルによる向き不向きはあまり感じません。 聴いていて気持ちが良いような清々しい切れ味を感じる瞬間もありながら、分析的になっていないのが上手いところです。よって、ロックやポップスの表現力も脱帽です。 ドライバーを複数使い分けることで、分離感と共に音楽の立体感が表現されています。目前でステージが立ち上がり、まるでその只中に自分がいるような感覚にさせられます。そのライブ感の中で、男声ボーカルは艶やかに、女声ボーカルは気持ち良く沁み渡ります。(だいぶざっくり分けました) 帯域ごとの質感が違う面白さが、ここにも顕著に出ているのかもしれません。また、前述の通り各帯域十分な量があり、分離感も十二分なので、音数の多い打ち込み系も凄くいい聴き心地でした。そちらのジャンルは正直不勉強なためあまり馴染みがありませんでしたが、このイヤホンが手元にあればハマってしまいそうだなぁと思わされました。 一方で、バランス感覚に優れているのは間違いなく素晴らしい部分なのですが、上記の質感ゆえ音一発の破壊力には欠けると感じるかもしれません。例えば、重ためのハードロックなどを好む方には、アタック感が不足している可能性があります。そちらの方面がお好きな方はポイント単位での圧力が足りているか、体感していただければと思います。 低域の質量などは十分に担保されていますが、瞬間的な圧力に関しては疑問が残ります。EDMも分離感ゆえに小気味良く気持ち良いですが、もっと暴力的にきてほしい場合は丁寧に鳴りすぎてしまうかもしれません。「もっとくれよ!」となる方もいらっしゃるかも……。これも点の圧力が鍵を握るところかと思われます。 明らかに高域が前にいるというのも、受け取り方次第かと思います。個人的には十分に楽しく満足感のある聴感だったので、ここは完全に「好きな音」次第だと思います。 結びの前に見た目に少し触れますが、店頭でたまたま目にして、デザインがきっかけで試聴される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。それほどまでに独創的且つ高級感のあるデザインで、本機で耳元を飾りたくなります。私はなりました。(初めて聴いた時は完全に見た目から入りました) ちなみにこれは余談ですが、付属してくるケースが驚くほど大きいです。こう聞いて想像する倍くらいは大きいです。プレイヤーやケーブルも悠々持ち歩けます!のようなレベルではないです。本気になれば小旅行くらいはできそうですので、是非一度検索してみていただきたいです。 総評として、全体のパワー自体が特別高いわけではないけれど、全ての音に確かな芯と繋がりがあるので不足感はありません。それらが抜群の解像度と余韻感で繰り出されるので何を聴いても楽しいし、色っぽいのです。 音楽体験に「高級感・万能感・艶やかさ」をお求めの方は是非一度、ご体感ください。
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えんじ
@e☆イヤホン 秋葉原店
Meze Audio
ALBA【~12/31まで! 応募、抽選でポスタープレゼントキャンペーン!】
¥29700 税込
「名門」が唱える「入門機」の定義
心地よい耳触りと、聴き応えのある濃密さを両立させた新たな名機候補。それがこちら、Meze Audioの「ALBA」です。「音にこだわる」ことの良さを時代に合った気軽さで持ち歩けるというのも、ブランドが考える「一台目の定義」として申し分ないと思わされました。 聴いてみると、とにかく角がなく滑らかなサウンドというのがまず飛び込んできた印象です。薄味ではないのに圧力は少ない、「体に沁み渡る音」と言ったところでしょうか。 本機のファーストインプレッションを形作る重要な要素として、空間表現の巧みさが挙げられます。横方向をベースに比較的広く取られている空間を活かしつつ、気持ち上へと抜けていく様が清々しいです。そんな空間に対する情報量にも不足はなく、密度感すら感じられます。それでいて窮屈な感じ、圧迫感はまるでなく、「しつこくない且つジューシー」な聴感でした。中でも楽器隊の広がりが顕著で、クールな音色の消え際の仄かな残響感が儚げです。その特性ゆえ、ミドルテンポ以下の楽曲の立体感を表現するのに非常に長けていると感じました。一方で、ハードロックやヒップホップなどのアタック感や重量感を感じたい方には別の選択肢があるのかもしれません。良い意味で力感なくスマートに鳴らすこの感触をどう捉えるか次第で、チョイスも変わってくると思います。 伸び伸びとした演奏に対してボーカルの距離は一歩近く、存在感は太めです。目前で発せられているような艶やかさ、生々しさは、そこに確かに息づく実在感を伴います。声の出どころは近めに感じますが、こちらも圧迫感はまるでなく、聴き手を吹き抜けていくような気持ちよさを体感できました。左右に広がる演奏に対して、こちらは前後の奥行きを感じるのが対比として面白いです。以上の所感から、本機の中高音域へのこだわりがひしひしと伝わってきます。情報量、スピード感がありつつも、あくまで優しく聴かせ、広々とした表現も聴き手を置き去りにしません。当事者感のある音というのがしっくりきます。前後も左右も共に味わえる空間表現によって、音楽が立体的に立ち上がる様も見事でした。結果としての「音楽体験」のことが非常によく考えられている音作りだと思います。 さて、オーディオファンからビギナー層のお客様まで、個人的に最も問い合わせが多いと感じる低音について触れていませんでしたが、こちらも表現に十分な量があります。あるのに、そのウエイトよりも深みの印象が強く残るのが不思議なところです。ボーカル帯とは対照的に出どころに一定の距離を感じるところがポイントかと思います。質感も他帯域と比較して柔らかく、耳触りの良い仕上がりです。その一歩引いたポジショニングとアプローチは、まさしく上品そのもの。他の音を邪魔せず、飲まず、あくまでも支え、引き立てる佇まいで、協調性のある鳴りという印象でした。全体的に抜けていく空間の感じを低音で上手くパッケージしているとも言えると思います。音楽の造形としての美しさ、その仕上げの部分をこの帯域が担っていると感じました。ただ、やはり低音の存在感を最重要視される方にとっては少し物足りない可能性もあるので、一度聴いて確かめてみることをおすすめします。 分離、定位感についてもまずまずありますが、固執しておらず、楽曲の一体感、グルーヴィーな感触というものが大切にされています。中域が前に出ることで楽曲の最大の旨味であるメロディーラインを主役に置きつつ、定位と空間表現による味付けを絶妙なバランス感覚で描写しているので、インスト楽曲やジャズテイストのものも、聴き方を見つけやすい親切設計になっていると感じました。 以上のように非常に丁寧に楽曲を表現してくれる本機ですが、音の温度感としては寒色寄りで澄み渡っています。優しさは湛えつつも、寄り添い包み込んでくれる暖かい音というのとは少し違います。スピード感を持って音が次々とシャープに駆け抜けていく、けれど置いてはいかれない、そんなギャップが癖になりました。ただ、音に対して明確な好みがある方にとってここは好みが分かれる部分となりそうです。私は凄く好きでした。上品で上質な音楽体験である一方、少し突き放されるような冷たさをはらむ本機で音楽を聴いていると、個人的には何かに憧れる時のような焦がれる感覚を覚えました。 さて、そんな本機のハード面に関しては、装着感がとても軽く、疲れ知らずといった感触でした。長時間の装着にも余裕で耐え得る仕上がりです。付属のキャリングケースもコンパクトながら質感が高く、持ち歩くことそのものに意味を持たせられるクオリティとなっています。それに加えて、USB-C to 3.5mmアダプターが同梱されているのも嬉しいポイントです。純正ケーブルと同じ素材を用いているので、こだわり抜かれたサウンドをスマホで直感的に楽しむことができます。この再生機器を選ばない間口の広さも、本機を選ぶ大きなメリットになっていると思います。ただ一方で、装着感の軽さゆえ、ホールド感や遮音性は僅かに薄く感じられます。ガッチリとした装着感がお好みの方や、静寂による没入感を重視される方には、イヤーピースの交換も選択肢に入ってくるのかなと思います。 以上のことから、音はもちろんビルドや付属品も含めて、音楽へ対するリスペクトが感じられるような一本に思えます。エントリーだからと妥協せず、作り込まれたサウンドから、音楽というものの唯一性、感情的な部分を再認識させられ、聴いていて胸が熱くなりました。「オーディオ体験」そのものに重きを置いているところに、名門メーカーが音の入り口の選択肢として本機に担わせたい思い、期待が感じられるようです。ファンか否かに関わらず、「音楽が好きでよかった!」そう思える「ALBA」の仕上がり、ぜひ一度ご体感ください!
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えんじ
@e☆イヤホン 秋葉原店
SIMGOT
EA500 LM
¥15300 税込
どんな自分もこれ一本で!一面では魅力が測れない、もっと知りたくなるイヤホンです!
「EA500の後継機」で片付けてしまうのはもったいない! 様々な表情を見せてくれる新作イヤホン「EA500 LM」のご紹介です。 こちらの製品、付属してくるのはイヤホンとケーブル、キャリングケース、イヤーピースとノズルがそれぞれ3ペアと、一見シンプルな内容です。ただ、この「三種のノズル」が本機の肝となり、多様な表現を聴かせてくれます。 前作「EA500」でも二種のノズルが付属していましたが、本機のノズルをそれぞれ試してみた結果、交換による変化を楽しむという意味で、付属の本数が増えたこと以上の満足感を得ることができました。 ですので、本機は特に、イヤホンのカスタマイズに馴染みがない方にこそおすすめしたい逸品です。 ノズルを換えたところでそこまで変わる? 本体部分は同じなのに? と思われる方もいらっしゃるでしょう。私も最初はそう思っていました。 そんな方にこそ、ほんの一手間でその日の気分やシーンにアジャストできるこのイヤホンの強みをお伝えしたいと思います。 まず、イヤホンそのものの仕上がりは、バランス感覚に優れた苦手の少ない優等生という感じです。「EA500」よりも中低域の量感が少し増し、描写力も向上したように感じますが、帯域バランスは比較的整っています。意図的に特徴を作らず、特定のジャンルに特化させないところに好感が持てました。細やかな表現も上手ですが、空間がややコンパクトなので、密度感も損なわれることがないのが絶妙です。 上記のような性質ゆえ、ノズルを換えたからといって繊細で優しい美音系から重低音ゴリゴリ極太サウンドに変身!というような極端な変化量とは違います。例えるなら、一人の人間の会社での顔、休日自宅でのんびりしている時の顔、友人とランチに出掛けた時の顔、のように、同じ人にも様々な表情がある、といった雰囲気が近しいでしょうか。それでは、各ノズルの個人的な分析を列挙していきます。 【金色ノズル/赤色リング】 明るい音という印象です。全体として柔らかめの音色ですが、音の芯の部分は的確に捉えてくるのできっちりとした印象を覚えます。清々しく伸びやかな中高域はまさに華やかです。余韻感もありますが残り過ぎず、輪郭がぼやけることがありません。対して低域は、量感こそしっかりしていますが、決して前に出過ぎることはなく、あくまで主役は上の帯域であるとの意思表示かのようです。「縁の下の力持ち」という佇まいでした。このような可憐且つ上品な音色はクラシックやジャズテイストのインスト楽曲との相性が抜群でしたが、そこに歌が加わることで、また違った表情を見せてくれます。歌声の距離が近く描写は細やかなので、ボーカリストそれぞれの表現や感情が流れ込んでくるかのようでした。言葉の力を感じられる表現です。そしてそれらを前述の特性を持つ楽器隊が品良く飾り立てる様は、時に目を閉じて聴き入りたくなるようなドラマチックな仕上がりとなっていました。 【銀色ノズル/赤色リング】 ニュートラルサウンドという印象です。残響感も少なく、質感、定位含めて正確な音を出してくれます。聴き手の感情が持っていかれすぎないので、楽曲の構成を把握したり、分析的に聴きたい時にうってつけのサウンドであると言えるでしょう。リスニング時は、個人的にはテクノの鳴りが特に好印象でした。小気味良さがクセになるサウンドで、電子音との親和性は抜群です。このリズムの取りやすさ、というより思わずリズムを刻みたくなる要因は、このノズルの低域の締りも一役買っているのでしょう。スマートな歯切れの良さが気持ち良く、このまま作業やワークアウトに出掛けたい気分になりました。捗ること間違いなしです。 【銀色ノズル/黒色リング】 最も弾力感のあるサウンドです。全ての音が弾むようで、これぞ元気サウンド!といった感想です。アタック感が強く、分離感も確かなものがあるので、ロック全般が得意です。ロックであれば、疾走感のある爽やかなものから、激しく重たいハードなものまで網羅できる印象でした。また、EDMなどのダンスミュージック系の、特にテンポが速めのものともピッタリです。跳ねるような音の質感が、トランスと呼ばれるような楽曲の中毒性をさらに高めてくれました。上記の質感ゆえ、ヒップホップとの相性も素晴らしいものがあります。そもそも曲全般がリズミカルなものがほとんどなので、ボーカル、演奏共に聴き応え十分です。三種のノズルの中で最も活きが良いので、ボルテージを上げてくれるような楽曲での運用を特におすすめします。 以上が各ノズルのざっくりとした所感となります。同じイヤホンでもここまで風合いを変えられるので、毎朝コーディネートを選ぶように、「今日はどの音にしよう?」なんて胸躍る生活も楽しそうだなぁと想像を巡らせながら聴いていました。皆様それぞれのご感想も是非お聞かせいただければと思いますので、この機会に是非、イーイヤホン店頭でお試しください!全店でご試聴可能です! 「EA500 LM」、私の今のイチオシでございます!