誰かが言った――
誰かが言った――。
『音楽は、“服用”するものになる』と。
その噂は瞬く間に広がり、我々の耳にも届いた。
鮮やかで透明な小さなカプセルが、どこかで目撃されたという。
どう見てもそれは薬か、海外製のカラフルなお菓子にしか見えず、まるで近未来の実験室から持ち出された試作品の様相らしい。
まさかそれが「音楽を“服用”するための道具」だとは、誰が想像できただろうか。
“服用する音楽”とは、一体どういう体験なのか?
この謎を解き明かさずして、我々の使命は果たせない。そう心に誓い、探検隊は密林へと足を踏み入れた――。
ポタオデとは:
ポータブルオーディオの略で、持ち運び可能な音楽再生機器全般を指します。具体的には、iPodやウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤー。また、それらに接続するヘッドホンやイヤホンなどが含まれます。
【図鑑No.002】薬のようなイヤホン
噂のイヤホンを求め、様々なポタオデが犇めく密林 (e☆イヤホン) を探索するぞ!
様々なイヤホン・ヘッドホンをかき分け……
ないで、すぐそこに――
「ここだ!!」
探索開始から5歩くらいで到着してしまったが、これで間違いない。
我々が探し求めた“音楽を服用する道具”が、ついに姿を現したのだ。
薬のような謎のカプセルの正体は――
\ワン! トゥッ! トゥリッ!/
水月雨 (MOONDROP)
「Pill ミュージックカプセル」!!
「Pill ミュージックカプセル」は水月雨のイヤーカフ型イヤホン。
一見すると、それはイヤホンには到底見えない。薬の形をした奇抜なデザインと癖になるギミックのケースで実現している異質なイヤホンだ。
ここまで見た目に振り切った製品が音にもこだわっているなんて、本当だろうか?
イヤーカフ型イヤホンとは:
耳を塞がない、今流行りのイヤーカフ型イヤホンは、耳に挟むだけで使える全く新しいイヤホン。まるでアクセサリー感覚で音楽を楽しめ、周りの音も聞こえるので、外出時でも安心して使えるのが特徴です。
【デザイン】
聴く前に、まずこの突飛な”ブツ”の外観をじっくりと見ていこう。
全体的に丸みを帯びたデザインで、やはりどう見ても薬の類だ。
だが、一般的なピルケースのように上下に開くのではない。こう……
クルンと、回る。
クルン、
クルン。まだ止まらない。
……まずい。
ハンドスピナーの如くずっと触っていたくなる現象が発生してしまう。
いかん、報告が進まない。仕切り直しだ。
この回転ギミックのせいで、どちらが表で裏なのか非常に混乱させられる。
裏側を回して開けるのだから、今見ているこちらが表…のはず。
裏を見て回せば表?
表のままだと取れないからこっちは裏?
10円玉の様に裏っぽい方が表みたいなことになっている……。
また話が飛んでしまった……、とにかく調査を進めよう。
中身を取り出してみると、やはりどこか近未来なデザインで、これまでの同メーカーワイヤレス製品の系譜を受け継いでいることがわかる。
単体で見てもそこまで安っぽい印象は受けず、ちりばめられた細かいデザインがなんともかっこかわいい。
しかも、カラバリが3つもある。
「いやぁ、どれもかわいいよなぁ……。こんなん見た目だけで全部ほしくなっちゃうよね。」
「自分用と、人にあげる用と、観賞用と……。」
――こんな事をしている場合ではない。
見た目だけでここまで語れてしまうとは。恐るべき”物体”だ。
【装着】
とりあえず装着してみよう。
装着してみると……驚いた。
その装着感は、驚くほどに軽快だ。
耳を優しく挟み込むような感覚で、圧迫感は一切ない。
まるでアクセサリーのようで、長時間着けていると、その存在を忘れてしまうほどである。
基地(自宅)でのデスクワークや、軽い家事といった任務遂行中も、脱落の心配はなさそうだ。
これならBGMを流しながらの作業も快適に進められるだろう。
(ただし、さすがに激しい運動には不向きなため、その点は注意されたい。)
外観のインパクトに惑わされがちだが、装着感は予想を遥かに超える高評価だ。
……さて、いよいよ核心に迫る時が来た。この奇妙なイヤホンは、一体どんな音を鳴らすのだろうか?
【サウンド】
装着感は予想外に良好だった。……だが、問題は音だ。 我々探検隊も、正直に言おう。
「どうせ見た目だけで、音質は二の次だろう」
と、完全に高をくくっていた。
ここまでデザインに振り切った製品だ、音が鳴るだけでも御の字……。
そんな気持ちで、我々は再生ボタンを押した――
「……。」
「なんだ、この音は……!!??」
裏切られた! 良い意味で!
それは特定の音域が強調された衝撃ではない。音全体の「まとまりの良さ」による驚きだ。
再生ボタンを押した瞬間、耳に広がったのは意外なほど豊かな音だった。
正直、オープンイヤー型は音が抜けてスカスカなものが多いと思っていたし、実際そういったイヤホンもあった。
だが、これは違う。しっかり音楽の芯はありながら、ここまで自然に聴けるとは……。
それでいて、オープンイヤー型特有の、音が頭の周りに広がるような開放感もしっかりと感じられる。
重厚さと爽快感、この両立は見事というほかない。
向こうまで音が広がり、実世界に音楽が馴染んでいく。
じんわりと溶けるように広がって、環境音との境界線があいまいになる。
まるで薬が静かに浸透していくようだ。
これが「音楽を服用する」ということなのか……!
この価格帯で実現されているという事実も、調査報告書に特筆すべき点だ。
長時間聴いていても疲れない、非常にバランスの取れた音質。
これは、ただの”見た目が面白い”だけのイヤホンではない。
音楽を聴くための”道具”として、クオリティが非常に高い。
この音質で、あのデザイン。そして癖になるギミック……。
もはや最高という言葉以外見つからない。
唯一の難点を挙げるとすれば、やはり「結局どっちが表なんだ!」という、オーディオの本質とは全く関係のない部分だけだろう。
【評価】
見た目だけかと思った”薬イヤホン”、その実力は本物だった!
音楽は“聴く”ものから、“服用する”ものへと進化していたのだ。
見た目、音質、そのすべてが高いレベルで融合している。
正直、あらゆる面で「やられた!」と思わされた一本だ。
思わず「これ、最高に”アリ”だな…!」とニヤけてしまうのも仕方がないだろう。
よって、探検隊による最終評価をここに記す。
変態度: ★★☆☆☆
(見た目のインパクトは満点。会話のキッカケにもなる)
実用度: ★★★★☆
(普段使いに最適。ただし激しい運動には注意)
ギミック中毒度: ★★ ★ ★★
(意味もなくクルクルしてしまう。仕事や勉強に支障が出る可能性も…)
捕獲難易度(価格): ★☆☆☆☆
こうして、大図鑑の1ページを埋めることに成功した。
だが、世界のどこかにはまだ見ぬ変わった製品が数多く存在しているはずだ。
我々の探索は、まだ始まったばかりである。
本日の図鑑登録製品
水月雨 (MOONDROP) Pill ミュージックカプセル
大図鑑シリーズ
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