ライブハウスのような場所で、巨大なスピーカーから発せられる大音量に圧倒され、感情を露わに叫んでいる男性のイラスト。男性はイヤホンを装着しており、その周りには音の振動を表す線が描かれている。右側には「ライブハウスの最前列、巨大なスピーカーの前でしか味わえないはずの”空気の振動”を、いつでもどこでも鼓膜に直接届け、身体の芯まで揺さぶる、禁断のイヤホンが存在すると…」というテキストが縦書きで表示されている。

【激震】 振動するイヤホン⁉はたして震えてるのは音か、心か―― | 発見!変わったイヤホン・ヘッドホン大図鑑!

誰かが言った――

誰かが言った――。


『震えるイヤホンが存在する』


巨大なスピーカーの前でしか味わえないはずの“空気の振動”。身体を通り抜けるように響く低音。圧倒的な音の存在感を前に熱狂するあの感覚。


もし、あの振動をいつでも鼓膜に届け、身体の芯まで揺さぶる禁断のイヤホンがあるとすれば……?

もう一度言うが、これはスピーカーの話ではない。イヤホンだ。 イヤホンが震えるというのだ


そんなことがあり得るのか?

地震を勘違いしてしまったとか、人に揺さぶられたとか、そういった類のものではなく?


果たしてイヤホンが震えるというのは本当なのか、 我々自身の耳で確かめずにはいられなかった……。


せめちゃん

書いた人:せめちゃん

オンラインストアスタッフ

傘を差すのが下手。
どうしても片側の肩が濡れるので、気を付けながら背中を濡らす。


ポタオデとは:

ポータブルオーディオの略で、持ち運び可能な音楽再生機器全般を指します。具体的には、iPodやウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤー。また、それらに接続するヘッドホンやイヤホンなどが含まれます。

【図鑑No.001】震えるイヤホン

噂のイヤホンを求め、様々なポタオデが犇めく密林 (e☆イヤホン) を探索するぞ!

様々なイヤホン・ヘッドホンをかき分け……

「ここはワイヤレスだから違うか……」

壁面にポタオデ達が色鮮やかに描かれた山を登り……

「なんかここの階段、急じゃない??」

幾多の困難を越え、我々は有線イヤホンが数多く生息する階層に到着。

そして、ついに


「ここだ!!」

禁断のイヤホンをみつけたのだ。


"振動するイヤホン"の正体は――

\ワン! トゥッ! トゥリッ!/

Kiwi Ears「Etude」

Etude」はKiwi Earsのインイヤーモニター。一見すると普通のイヤホンだが、これまでのイヤホンと一味違う「 振動を生み出すための特殊なパーツ(KVT)」を搭載している異質なイヤホンだ。


過去に“振動ヘッドホン”が話題になったことがあるだけに興味は尽きない。


だが、耳にすっぽり収まる小さなイヤホンまで震えるなんて、本当にあり得るのだろうか?

KVT:Kiwi Vibration Transducer(振動伝達トランスデューサー)

独自開発による新しいタイプの振動トランスデューサー。従来の骨伝導ドライバーとは異なり、Bluetoothスピーカーなどに搭載される小型振動ドライバーに類似した構造を採用。


【デザイン】

早速聴いてみたいところだが、先にデザインを見ていこう。


全体的にはKiwi Earsの他モデルと同じく落ち着いたデザインになっていて、とても"振動イヤホン"には見えない。

実物を見てみると少し大きめの筐体だと感じる。

もう少しこう……、激しくデザインが尖っていてもいいのではないだろうか。「震えるんですよ私!!!!」みたいな。


とはいえ、尖り過ぎてると普段使いしにくいだろうし、このくらいのでいいのかもしれない。

本体を横に向けてみると、明らかに筐体が厚いのが分かる。振動パーツ以外にも1DD+3BAも入っているのだから、確かにこのくらいのサイズになりそうだ。

定番のインイヤモニター SHURE SE215(右) と厚みを比較した場合

では、いよいよ耳に迎え入れてみよう……。

厚みのある筐体だがしっかりと装着できるだろうか。


少し角度をつけて、手前にひねりながら軽く押し付けて装着する。

心配とは裏腹にすんなりと装着できた。やはり筐体は大きいが、それでも外へがっつり飛び出す様な見た目、といったことはない。しっかりとフィットしている感覚がある。

しかし、この時点で違和感を覚えた。


「ん?……何か聞こえる?」


まだ楽曲を再生していないのに、何か聞こえる気がする……。

何か震えているような音が聞こえる

耳に装着した状態でイヤホンを触ると、何かバネの様な、金属がはねるような音がするのだ。


ゴイーンともホイーンとも言い難いが、何かが震えている響きを感じる。


これは例の 振動を生み出すための特殊なパーツKVT)の音ではないか?これは……、期待できるぞ。


さっそく、音楽を聴こう!


【サウンド】

ついに……、「Etude」で音楽を鳴らす。

"震えるイヤホン"の真相をこの目で、いやこの耳で確かめるのだ!

行くぞ……ッッ!!!!!

……えッ!!!!!

震えてる!!??!???!??

Etude」はまさしく「巨大なスピーカーの前でしか味わえないはずの“空気の振動”を鼓膜に直接届け、身体の芯まで揺さぶる、禁断のイヤホン」だった。


正直その仕様に懐疑的で、一般的なイヤホンとの違いを感じないだろうと思っていたが、振動感がしっかりとある。

低域が~、高域が~などといった部分ではなく、素直に振動という機能が面白く思える。


短い残響感というか、箱鳴り感というのだろうか、音が端々で跳ね返るような広がりを感じられて、一般的なイヤホンと響き方が全く違う。これは面白い。

ここで注意してほしいのが、振動があるからといって「重低音に支配されてはいない」というところ。


中低音の響く波紋の淵のような、輪郭の部分にのみ振動が添えられている印象を受けた。


重低音の揺れというよりは空間的な音揺れの再現に近く、小さめの倉庫ような響き方に近いといった感じ。


低音を自然にアシストした感覚で聴けるので、揺らすことに特化した煩わしさは感じない。

つまり、低音系イヤホンにありがちな「低音の主張が激し過ぎてボーカル被って聞こえない」といったことがない。


振動がアシストする分、低音は確かに強いが、重低音系ではない。


むしろキラキラとした中高音が目立つのがこの振動するイヤホン 「Etude」の面白いところだ。

ついでにライブ音源も聴いてみる。

やはりバスドラムやベースラインが際立ち、空間を震わすような熱気が KVT によって再現されているように思う。


ウーファーのように別で振動を鳴らしているように感じる分、中~高域が低域とレイヤー分けされていて、空間を立体的に捉えることができる。


特にオーケストラではかなり新鮮な響き方で、通常のモニターイヤホンでは感じられないような臨場感があった。


【評価】Kiwi Ears「Etude」は本当に振動するイヤホンだった

震えると噂のイヤホンは本当に震えた!!!


揺れるような独特でかなり面白いサウンドを鳴らす。全体としては過度に盛っているような帯域もなく聴きやすいイヤホンだった。


振動を生かして激しいアクションゲームなどに用いてもかなり有用であるようにも思う。


正直、心揺らされる振動系イヤホンだ。思わず「音おもしろッ」って声出たし。


よって、以下の評価をここに記す。

変態度: ★★☆☆☆

ロマン度: ★★★☆☆

実用度: ★★★★☆

捕獲難易度(価格): ★★☆☆☆


こうして、大図鑑の1ページを埋めることに成功した。だが、世界のどこかにはまだ見ぬ変わった製品が数多く存在しているはずだ。我々の探索は、まだ始まったばかりである。


本日の図鑑登録製品