Victor HA-WM90にあうケーブル(5万円程度の当初予算)でイーイヤホンで探していたときに「予算オーバーだと思いますが・・・」と試聴を薦められたケーブル。
正直、ぶっ飛びましたね。申し訳ないですが、いろいろと試聴した他のケーブルは純正ケーブルと比較して「うーん、まあ変わったかな?」とプラシーボ効果程度の差しか感じませんでした。しかしこのケーブルについては、即座に違いが分かりました。
Victor HA-WM90は元々、低域に定評のあるヘッドホンです。一方で高域もまあ伸びますが、密閉型の特徴か、こもり気味の傾向は否めません。音数もすごいのですが、どこか二次元的であることは気になっていました。
それがこのケーブルに変えた途端、一気に三次元のサウンド空間が広がりました。曲によっては、右側の耳元でギターが、左側でベースが、そして真後ろでドラムセットがクリアに鳴り響く様子が分かります。誇張ではなく、初めて聴いたときは、思わず後ろを振り返ったほどです。ライブ会場の舞台で、ボーカルの隣に立つような生々しさがあります。いろいろなオーディオ機器に触れてきたつもりですが、これは初めての体験ですね。
純正ケーブルのサウンドとは、ハッキリ言って、まったく異なります。曲を決めて精密に再生比較しても、本ケーブルのよさが理解出来ます。逆をいえば、最初はあまりの違いに音酔いがしたくらいです。まさに「覚醒」ということばがピッタリな、ヘッドホンの性能を150%引き出すケーブルだと断言でます。
WAGNUS.社の代表・Haru Wagnus氏は、写真家としても活動されているそうです。考えてみると本ケーブルがもたらす音の変化は、被写界深度の浅いレンズから深いレンズに交換したときに、遠いところに位置する被写体までクッキリとクールに写し込まれる感じに似ています。それでいて、被写界深度の浅い写真に感じる独特のウォームな味わいはしっかりと残っている。そんな映像感覚を本ケーブルで意図的に演出されたとするならば、Wagnus氏はすごいアーティストだなと思いました。
難点は、アリスブルーというかわいらしい色が、黒い無骨なデザインのヘッドホンには今ひとつマッチしないこと。多少、タッチノイズが乗ること。またご多分に漏れず、ナラシはそこそこ必要ということです。低域は最初から良かったのですが、高域の抜けが体できるためには、まあまあ時間がかかりました。それまでは、天井感がありました。これはヘッドホンの特性もあると思います。買った直後はちょっとガッカリしましたが、今は十分な抜け感が出てきており、満足しています。
お金が工面できるなら、ぜひ買った方がいいヘッドホンケーブルです。沼から永遠に解脱できるかはまだ自分に自信がありませんが、これで少なくとも、しばらくは距離を置けそうです。