音が空気と、空気が音となる

＜音＞
境界など存在しない、”音が空気と、空気が音となる”ようなエアリーサウンド


＜良い点＞
・パッドサイズが85mm×110mm（W×H　実測値）と大きなカップに反して235g（実測値）とオーバーイヤー型としては軽量の部類　側圧もやや弱めで装着感は軽い　ただし痛みが出にくいかと言われたらそうとも言えない（悪い点の2点目参照）
・バンドの調整幅がかなり大きい＆パッドの内径も大きいので、頭囲が大きな人や耳が大きな人でも楽勝で装着できる　アメリカンサイズ対応
・パッドを嵌めるパーツが独立していて簡単に取り外し可能　パッドの交換が少しだけ楽
・エアリーな音作りが得意な水月雨の集大成といえる音で、もはや”開放感”の概念を超えて音が一部”外界と同化”している　開放型ゆえに人混みのなかで使うのは避けた方が良いが、散歩中に使うとめっちゃ気持ち良い 水月雨自身が”傑作”と言いたくなるのも分かる
・中心に定位する音（主にボーカル）が「音楽」として浮くようになっていてリスニング感も保たれている　とても良い調整だが癖を若干生んでいる感じもある（悪い点の4点目参照）


＜悪い点＞
・価格を聞いたらビックリするレベルで見た目が粗末　3000円程度のヘッドホンにしか見えない　所有欲はほぼ満たせないのでその辺を気にする場合は注意
・標準のイヤーパッドがやや高反発のため点でぐっと押されるような感覚がある　側圧自体は強くないので締め付けで頭全体は痛くならないが、パッドが接触している部分で局所的に痛む可能性はある　パッドが大きいゆえに骨が突き出ている部分（こめかみ等）にパッドが接触しやすく痛みやすい　もし気になるなら本機に適合する低反発パッドを探して変えるとよい　また本機のパッドは初期の向きで前側薄め、後側厚めなので、パッドを180度回転させて着け直すと前側のクッション性が上がり、少しだがあたりが改善する（自分はこの状態で使っている）　これなら新たにパッドを購入せずに済むので、前側のあたりか強くて気になる方は試してみてもよいかも
・初期で付いている純正パッドがパーツに数か所両面テープでくっ付けられているため、交換の際はこれらを剥がす必要がある　初めのパッド交換はすんなりいかないので注意　ちなみに上述のようにパッドの向きを180度変える場合、パーツごとパッドを外し、180度回して着け直せばよいのでテープを剥がす必要はない
・中心に定位する音以外は「音楽」としての押しが弱く、中心と外側で音の密度差が大きい　そのため楽曲によってはスカスカ感が大きめに出る癖がある　音場に音が詰まっていない楽曲、本機の名前から表現を借りるなら "Void" な楽曲が向いていると思われる


＜総評＞
水月雨の理想が形となったようなヘッドホン　「開放的な音はこうあるべきだ」という水月雨の思いが凄く伝わってくる音作りで、まさに”音が空気と、空気が音となる（為る、鳴る）”　明確なキャラクター性を感じる音はリスニング用としてもうまくまとめられていて、音に関しては本当に素晴らしい傑作　しかしパッド面で少し装着感がハードに感じられたり（パッドの向きを180度変えると少しだけ改善する）値段不相応の質感だったりと、マイナスポイントも幾つかある　しかしこの音の魅力はそれを補って余りある　開放的な音のさらにその先を行く音を聴いてみたいという方、是非試聴を