A&Kの音の良さをボーカル周辺に濃縮した、一聴してそのように感じました。

A&Kの音質は、ノイズ感の少なさやカッチリとした音域、空間表現などが特徴ですが、本機にはその良さをボーカル周辺の中音域に集中させて「一点豪華」に仕立てたように感じます。

もちろん、他の音域がおろそかになっているわけではありませんが、必要十分な音質を全域に保ちつつもボーカル域を一段充実させることで、単に潔いと感じるだけでなく、こんなにも新たな製品価値が想像されるのかと、正直良い驚きを感じました。

そのボーカルですが、くっきりとした音像で適度に近く、声がまっすぐに飛び込んでくるように聴こえるように感じます。併せて、クリアな音により声質や色気なども感じさせてくれ、一聴で聞き惚れてしまいました。これは男女の声に限らずではありますが、個人的に女性ボーカルが好きなので、とても満足できる音です。さらに、音域的に近いバイオリンの音が魅力的に感じたのも、バイオリンも好きな自分として予想外で良かった点です。

SP3000のようなフラッグシップに対し、低価格化しつつも、ある一点でも質を落とさないようなA&Kの商品展開は、その巧みさや開発能力の高さを感じずにはいられませんでした。

（KANN ULTRAなどにも、同様な好感を持っています）

歌を聴くなら一度は試す価値あり

小さくて電池持ちが良く使いやすい。

sp3000と並べて視聴しましたが、価格を考えるととても良い選択肢になると思います。

横に音が広くて、ノイズも少ないです。

弱点は小型ディスプレイで操作が難しい事です。

あとレスポンスも良くなかったです。ただ音楽を聴くだけでスマホの用に操作することはないので、少し我慢することが出来れば問題にはならないかもしれません。

Astell&Kernのエントリーモデルとして知られる「A&norma SR35」。私はこのDAPのオーナーである。結論から言えば、これは万能型の優等生ではない。しかし、ある一点においてハイエンド機すら凌駕する輝きを放つ、所有者の心を掴んで離さない「一点突破型」の驚異的な製品だった。

まず、音が出た瞬間に感じたのは、その類稀なるボーカル表現への執着だ。多くのDAPが目指す音の調和やバランスとは一線を画し、SR35はただひたすらに声の生々しさを追求している。「Astell&Kernがこの価格帯で示したかった音の核はこれだったのか」と深く納得させられた。

特に印象的だったのは、その潔いまでのサウンドチューニングだ。正直に言って、ハイエンド機と比較すれば低音域の深さや高音域の伸びやかさはお粗末と言わざるを得ない。しかし、その弱点こそが、SR35の真価を引き出すための布石となっている。一度ボーカル曲を再生すれば、その評価は一変するのだ。控えめな両端の帯域に支えられ、ボーカルラインだけが鮮烈なスポットライトを浴びたかのように浮かび上がる。その声の艶、息遣いの温度感は、一部のハイエンド機をも超えるほどの説得力で耳に届く。

この個性的な音作りは、まさに「ボーカル好きのためのDAP」と呼ぶにふさわしい。万人におすすめできる製品ではないことは承知しているが、好きなアーティストの声を心ゆくまで堪能したいと願うファンにとって、これ以上のパートナーは存在しないと断言したい。ハイエンド機が全ての音を描き切る総合芸術だとしたら、SR35は「声」という一点を極めた専門芸術品。私はこの製品を長く愛していきたいと思う。

小型で使いやすく、持ち運びに便利