QXはFIIOのフラッグシップのドングルDACシリーズで、QX13はKA17の上位にあたります。機能そのものはKA17を引き継ぎ、デスクトップモードも健在です。
【スペック】
QX13は900mW(32Ω，THD+N＜1%)という、ドングルとしてトップクラスの出力です。よほど高インピーダンスの平面駆動ヘッドホン等でなければ対応できるでしょう。ハイパワーにも関わらず、発熱も気になりません(ほんのり温かくなる程度)。
S/N比、ノイズフロア、THD+Nの数値は極めて良好ですが、KA17と同等orむしろKA17のほうがわずかに上回る部分もあり(S/N比はKA17が≥126dB (バランス)に対しQX13は≥124dBなど)。データ上ではKA17も優秀です。
アンプ「OPA1692×2、INA1620×4」とあり、FIIOがよく採用する「THX AAA−」系統とは異なります。据え置きアンプをより意識した、新しい方向性といえそうです。
【使用感】
視認性の高いカラーディスプレイが良いですね。EQ調整等はアプリでもできますが、ボタン操作もやりやすいです。
マグネット付きレザーケースで、本体とスマホがくっつきます。DACポケット等でまとめる手間がないのが嬉しいポイント。
【音質】
「FIIO FT1」や「SIVGA Que」「hidizs MP145」等を用いました。とにかくデスクトップモードの音が極太です(笑)。
一聴しただけで引き込まれるダイナミックさがあり、すぐ気に入りました。
デスクトップモードオフだと、わずかに音が柔らかく、音場が遠くなる感じでしょうか。これはこれで良い音。
所持している「ifi hipdac3」と比べても、QX13のほうがやや好みです。hipdac3はウォームな音で、良くも悪くも色付けがありますが、
QX13は、ESSチップならではの自然なクリアさと、リスニング向けに調整されたエネルギッシュさを併せ持ち、とても楽しい音です。
音場は横よりも縦方向性に広がりますが、割と近め。FIIO K11(据え置き)のほうがやや広いかも。ただ本機のほうが音にメリハリがあり、総合的に見ると、ここでもQX13強し。
【2つのバリエーション？】
QX13は、4000円ほど高価なカーボンブラックverがあり、公式サイトでは、21層カーボンがノイズ干渉や熱への耐性を高めるとあります。
ただ、カーボンの有用性をアピールしつつ、アルミ版も用意する売り方は、オーディオにこだわるユーザーにとって混乱の元ではないでしょうか。
内部が同じ以上、大差はないとは想定できますが、一部のレビュアーからは音質差について言及されており「実際のところどうなの⋯？」となりますし、なんとなく安価なアルミ版を選ぶことに引け目を感じてしまいますね。
とはいえ、私自身は今のところアルミ版で不便性はなく、好みと重量(カーボンのほうが軽い)で選んでいいと思われます。
【まとめ】
QXという新たなカテゴリで、ドングルの限界に挑んだ意欲作です。
これほどのクオリティだと、もうこれがゴールでいいのでは？とさえ思えてきますね⋯すっかりこのパワフルサウンドの虜です。もちろん、据え置きやDAPにも強みがあるとはいえ、私の用途ではQX13とスマホで完結できそう。
3万円代というのもプレミアムドングルDACの相場としては絶妙で、「DC elite」や「GObar 剣聖」等に手が出ないユーザーの新たな選択肢としてもありがたいです。
