試聴環境
DAP：Astell&Kern SP3000T（Tubeモード）
ポータブルアンプ：iFi audio Diablo2
試聴楽曲
Eve「アイオライト」
BUMP OF CHICKEN「窓の中から」
普段使用しているイヤホン
MADOO Typ622
MADOO Typ512
Eve「アイオライト」での検証
Eveの「アイオライト」という楽曲は、音数がかなり多く、低音は沈み込み、高音はシャワーのように降り注ぎ、音が突き抜けるような疾走感もある。その中でボーカルが爽やかに全体を引っ張っていくような楽曲である。
この曲をボーカルが刺さらないように、なおかつ低音から高音まで音がもたつかずに鳴らすことができるか。
今回はそこを重点的にチェックした。
この楽曲をTyp821で聴いた場合、その条件自体はクリアしていたものの、ボーカルの胸に訴えてくるような厚みに不満を感じていた。
Typ512では、低音の沈み込みやボーカルの厚みには満足していたが、全体的な音の解像度感には満足できなかった。
Typ622はかなり惜しいところまで来ていたが、ボーカルの刺さり感が少し気になっていた。
では、Typ930ではどうだろうか。
一聴してまず感じたのは、全体のクリア感、特に空間の広さである。
Typ821ほどのアタック感はないものの、音の定位がより空間的になっている。Typ821でも定位感はかなり良かったが、Typ930ではさらに定位が分かりやすくなったと感じる。
私が普段カーオーディオで聴く定位感に近くなり、音の実在感がより増した。
音のスピード感も非常に満足できるものであり、さすがMADOOのフラグシップであると感じさせられた。
一方で、Typ821のような強いアタック感はなく、ある意味ではより聴き疲れしにくいチューニングだとも言える。
Eveの歌声を、Typ821ほど質素にせず、より音色的に聴かせつつも、821のようなスピード感は健在である。
また、Diablo2を接続しなくても、SP3000T単体でしっかりと鳴らし切ることができる点も印象的だった。
Typ821ほど機材選びに苦労しない、つまりより多くの人にとって扱いやすいイヤホンだと感じた。
BUMP OF CHICKEN「窓の中から」での検証
「窓の中から」は、ボーカルの表現力がかなり問われる楽曲であり、途中に入るハモリのコーラスが割れずに鳴るかどうかで、聴いたときの満足感がまったく異なってくる。
Typ622やTyp821では音の押し出しは強いものの、聴き疲れが強いと感じていた。
Typ512では声の分離感に難があり、また解像度感も足りないと感じていた。
Typ930ではどうだろうか。
ここでも、「アイオライト」で述べたのと同様に、空間表現の巧みさが際立つ。
左右に配置されるコーラスがきれいに分かれて聴こえ、音が濁らない。
ボーカルも非常にきれいに分離しており、感情表現がそのまま伝わってくる。
結果として、声が涙腺に訴えかけてくるような鳴り方になっていると感じた。
総評 ――…
