新規参入ブランドということで興味を持ち、試聴のみではありますがそれなりに時間をかけて聴いてきました。
全体の傾向としては、かなりスッキリと見通しの良い音を出す機種です。
ゆったりと聴き流すリスニングではなく、一音一音の美しさを集中して聴きたい時に向いていると思いました。
9個のドライバのうち4つも超高域に割り当てたというだけあり、高域はとてもきらびやかによく出ています。
言うまでもありませんが、安価なイヤホンのようにキンキンした感じではなく、あくまで上品なものです。
量感は多いですが、それ以上に抜けが良く、不快にならない上手な調整で、心地よく爽やかです。
この音を売りにしているのだろうなと思いますし、
これを目当てに買っても良いのではないでしょうか。
一方、他の方もレビューに書かれている通り、低域の量感はそれほど多くありません。
ですが、この機種に関してはこのバランスで正解だと思います。
低域の量感が多いと、派手にはなりますが上品さが失われてしまう可能性もあるからです。
また、量は少ないと言っても超低域まで深く沈み込んでいますし
空気を揺らしている感覚もしっかり感じられるため、低域が痩せているという感じにはなりません。
ありていに言えば、量は少ないが質の良い低域です。
この機種は低域にD型ドライバを使用していますが、D型ドライバのメリットを量ではなく質のために活かしたのだと思います。
高域がよく出て抜けが良く、低域は少なめで質を重視
…ということで、必然的に細かい音が聴き取りやすく、解像感は高いです。
「意識して聴くと色々な音が聴こえる」のではなく
「意識するまでもなく一つ一つの音が聴こえる」といった感じです。
そういう意味ではモニター「的」と言えるかもしれませんが、何でも華やかな音にしてしまうので
本当にモニターとして使うのはおすすめしません。
この機種を使用して、音質以外の点で気づいたこととして「軽い」というのがあります。
この手の「カスタムのような形のユニバーサルイヤホン」は数多くありますが
大抵が金属や中の詰まったアクリルで出来ていて、筐体が大きい分だけ重いのが当たり前だと思っていました。
ですが、この機種はこの手のイヤホンの中ではかなり軽い部類に入ります。
重いイヤホンの場合、イヤーピースをきつめにして耳の奥にしっかり装着しないとすぐ緩んでしまうので
「それが窮屈で苦手」という人も多いでしょうが
この機種のように軽ければ、イヤーピースで耳に軽くフタをするような装着方法が可能なので
窮屈さが嫌な人にとっては良いポイントだと思います。
ただ、そう言っておいて手のひらを返すようなのですが、
私自身は耳の奥にしっかり装着するタイプの方が好みです。
軽さについては好感が持てるのですが、ノズルはもう少し長い方が良かったなと思いました。
総評
最初に述べたとおり、高域に特徴のあるイヤホンです。
「万能型で一つだけ良いものを持っておきたい」という方よりも
「特定のポイントに強みのある機種を色々使い分けたい」というマニアの方におすすめします。