余計なことをせずに、音源を忠実に再生してくれます。

音色は、どちらかと言うとタイトでドライ。音の線が太くしっかりしており、ひとつひとつの音が明瞭でありながらエッジが鋭くないので、聴き疲れしない自然な音です。

(箱出し直後はタイトさとドライさが際立ち、デジタル的な粒々の音ですが、エージングが進むとごく自然な滑らかな音になります。)

音域バランスは、ニュートラルと言うべきか、音源を忠実に再生するので、高音域から低音域まで、強さも量もそのまま鳴らしてくれます。ただし、超高音は刺さらないよう、また天井を感じないよう、絶妙に抑えているように感じます。低音域は深い音がしっかり響いており、耳で感じるダイナミックレンジはかなり広いです。

解像度は必要十分な高さ。音の分離能が高く、意識すれば高音から低音までどの音でも追いかけることができます。リスニング用ではドンシャリ傾向の製品が多い中、それらと比べて、中音域が鮮やかに聴こえるのは耳に新鮮です。

音場は広大というわけではないですが、モニター系としては広い方です。定位感がしっかりしており、立体的な空間構成。特に左右に広いのが特徴です。

ボーカルは近すぎず、適度な距離感。音源によって距離感が変化します。

メーカーの商品説明にある「リファレンスリスニングやミキシングに」という言葉は間違いないです。

リスニング用としても十二分に楽しむことができます。特に余計な味付けをしていませんが、味気ないわけではなく、素材の旨味をそのまま引き出してくれます。

(装着感も、なかなか良いです。側圧は適度。イヤーパッドが一見すると小さいのですが、すっぽりと私の耳朶を包み込んでくれています。)

2万円以下でヘッドホンを探すのであれば、当機を第一候補と考えて良いと断言します。

ポータブルとしての使用を想定していないヘッドホン全般に言えることですが、プレイヤーにパワーがないと、音質が大きく劣化してしまいます。

当機はそれが顕著です。中高音が妙に軽く、低音が弱くて柔らかいフニャフニャの音になってしまいます。一般的なポータブルプレイヤーでの使用をお考えなら、当機は向いていないと言わざるを得ません。

でも、私たちの購入前の試聴はポータブルプレイヤーでせざるを得ないことが多いのですよね。装着感の確認(結構これって大事ですよね!)と解像度チェックはできます。低音が弱く聴こえてしまっても、実際は決してそんなヘッドホンではないとはっきりと記しておきます。