わたしはJVCのウッドコーンファンなので遅ればせながら本機を入手した。有線ではFX1100、FW1500を保有しているのでこれらとも音質傾向を簡単に比べて見た。
さて、いきなり音質についてだが、本機は正真正銘のウッドコーン系アコースティックサウンドである。圧倒的な低音、ウォームかつ芳醇、そして心地よい空間表現(余韻)を持つFX1000と、高音-低音までバランスが整った近代的でややソリッド(FW1000と比べて)なFW1500と比べると、後者にやや近いサウンドである。いずれにしても同社のウッドコーン有線イヤホンと同格の音質レベルを持っているということだ。本機をはじめて聴いた方はどのTWSとも似ていない独特な空間表現を感じるだろう。繊細でありながら温かみがあり、角が取れた丸く柔らかいサウンドである。決して解像度が低いわけでは無いが最近の音質に振り切った高級TWS(Fokus pro、Gemini、等)のように音の輪郭とメリハリ感が際立っているタイプではない。低音の量感は多い方ではあるが聴き始めはタイトではなく、大きな塊として前面に押し出される。しかし、30時間を超えてきたあたりで低音が締まってきて、中-高音とのバランスが極めて良くなった。明らかにエージングが必須のイヤホンである。ある程度鳴らし仕込んだ暁にはTWSでは唯一無二の滑らかさと柔らかさを併せ持つ癒しのサウンドを得ることが出来るだろう。特にclassic&jazzのアコースティックで録音が素晴らしいコンテンツに対しての再現性と空間性は秀逸であり、他のTWSには無い特性である。アナログ&ピュアオーディオを志向されている方に唯一おすすめ出来るのTWSが本機である。
筐体とケースの質感も悪くは無い。着け心地であるがノズル部が長いため人に寄ってはイヤピースを変えないと安定感が得られないかも知れない。
またノイズキャンセリング機能が弱いという声を多く聞くが、私はそうは思ってはいない。NCの考え方はややSennheiserに近いと思うが音楽を聴くという事に於いては必要十分であり、実際はAirPods proよりやや弱いレベルである。
操作性に関しても賛否両論あるが、全機能を左右のタッチアクションに集約した本機は私にとっては使いやすい。しかし、連携アプリが無いというのはいかがなものか。イコライザー機能など私は必要としないが、せめてファームウェアアップデートを可能にしてほしい。ある意味「これで完結」しているというJVCの自信とプライドなのだろうか。
本機はSONYのDSEE Ultimateと同様の「K2テクノロジー」というハイレゾ相当にアップサンプリング機能を有しているが、この機能は常時オンが良い。オフにするとサウンドの空気感がこじんまりしてしまう。(SONYより自然で効果は絶大)
私は写真のNoble fokus proと本機をTWSの音質「両横綱」として使い分けているが、ある意味対極のサウンド傾向にある。本気で聴き込みたい場合はfokus pro、リスニングでゆったりと癒されたい場合は本機である。
群雄割拠のTWSに於いて、唯一無二の「リラックス&癒し」の空間表現、アコースティックの再現力を持つ本機は貴重であり、それはJVCの音楽に対する知見の歴史であり真骨頂なのだ。