niimbus
US5 PRO
¥1221000 税込
感性の可否を問う。
niimbusは業務用製品を主に製造している、独LakePeople社の民間用最高級ラインに位置するブランドです。 民間用としては他に、Violectricというブランドがございます。 今回ご紹介する“niimbus/US5 Pro”はまさにフラグシップ中のフラグシップ。レビューを書く方も気合が入ります。 ヘッドホンは一番信頼を置いているFOCAL/UTOPIA SGを自宅より持ち込み、試聴を行っています。 DACに関しましては、RME/ADI-2/4 Pro SEと、セカンドオピニオンとしてFIIO/R9を使用いたしました。
まずサウンド傾向はシルキーで聴き心地の良いサウンドです。 中高域~高域に刺さりが無く、ふんわりと先の方まで伸びてゆきます。 低域も丸みを帯びており、上品で適度な沈み込みと広がりを見せてくれました。 中低域~中域にちょっとした膨らみがあり、ボーカルラインやギターラインの柔らかさに一役買っています。 駆動力も必要十分にあり、いろいろなヘッドホンに合わせやすいと感じました。 音色も安定しており、どのような曲を聴いてもUS5 Proが整えた上質さを感じられます。 空間も広く、上下左右に圧迫感や詰まりを感じさせません。奥行きもそこそこあります。 高域のふんわりとした伸びや、低域の沈み込み具合に一役買っている印象です。
さて、もう少し細かく見ていきましょう。中高域〜高域の刺さらなさは見事なものですが、その分、音の先端がかなり丸くなっています。UTOPIA SGも少し丸める気質を持っているものの、これを差し引いてもと言ったところです。立ち上がりはそこまで遅くはないものの、この丸さにより鋭利な表現は少し苦手なようです。逆に、ひたすらリラックスした中高域〜高域を求めている方には心強い味方となるでしょう。
低域の表現は上品で聴き心地もよく、適度な沈み込みでそこまで違和感は感じられません。若干下に御椀のような溜まり方はしますが、それがまた、ふんわりと広がり、温めの質感に繋がっています。お腹にズシリと来る圧のある表現や、くるぶし当たりで鳴っているような沈み込みは苦手なものの、出すべき所はしっかり出しており、音源に入っている空気のどよめきも聴こえます。これに関してはDAC側が出していても、ヘッドホン側が低域に敏感でも、アンプ側が出せなければ聴こえません。その点に置いては流石フラッグシップモデルです。
中低域〜中域は少し前目に出てきます。また、少し膨らみがあり、良く聴こえるとともに柔らかさが加算されている印象です。立ち上がりと下りが他の帯域より若干早く、混濁しないよう上手く調整されています。そのため、柔らかく聴けるのに歌詞がボヤつかず聞き取りやすくなっており、かなりの強みとなっています。
また、定位も悪くなく、概ねあるべき場所にあります。音像もその通りに形成してくれている印象です。微細部は若干見えにくいですが、ゴリゴリに情報量を出すヘッドホンアンプではないと感じているので問題ないでしょう。
空間自体はそれなりに広めで奥行きも感じられます。そこそこ奥まで探るとベールのような壁が現れますが、上に同じくといったところでしょうか。色味や表現力は基本的に固定されている印象で、音源やジャンルに関わらずUS5 PROとしての整え方に収束します。自在性はちょっと弱めです。(ここに関しては、後述する改善策でも変らないかなと感じています。ただ、この整え方がとても好きならば問題ないでしょう。)
これまでに書いたネガティブな部分は、電源周りや各ケーブル、DAC、使用するヘッドホンを吟味することにより、改善したり見えなくしたりする事がある程度可能ですから、そこまで心配することはありません。寧ろ、最上位のヘッドホンアンプ等はそこが醍醐味であり、腕の見せどころでしょう。如何にネガティブを無くし、US5 PROとしての強みを残すかが勝負です。
真剣に、長く付き合えるヘッドホンアンプをお考えの方は是非一度ご試聴ください。