スタッフレビュー詳細
音楽の躍動感や微細な音を表現する
音源の情報や上流の機器の音を丸裸にするようなその音は、何でも良い音に聴こえるような演出をせずありのままを聴かせてくれます。全帯域を余す事なく詳細に聴く解像度を求める方や、素直な音を求める方に向いていると思います。
【外観】
黒で統一された外観、ハウジングフレーム部のメタルフレームには、剛性と品質の高さを感じます。
手にして見ると、まず本体の軽さに驚きました。外から見ると厚みがありそうな見た目ですが、内部空間が広く耳を入れるのにもかなり余裕があります。ドライバーは背面のハウジングに貼り付くように設置されていて、耳との距離を出来るだけ広く確保しているように見えます。また頭部のサイズ調節も無段階で調整でき、細かいフィッティングがしやすいです。イヤーカップを垂直方向に回転させるスィーベル機構や頭頂部に圧が集中しない柔軟な形のヘッドバンドなど、とにかく装着にストレスを感じません。素晴らしい装着感です。
【音質】
2022年開催のポタフェス冬の試聴でも使われたRME「ADI-2 DAC」で聴いてみます。低域から高域まで、音の響きを削ったりどこかの帯域を強調することなく克明に描き出す解像度に圧倒されました。音の太さや硬さ、響きの量など温度感までイメージできるような鮮明な音。ダイナミックでありつつ繊細さも兼ね備えています。
もう少し聴きこんでみます。低域は抜けが良く十分な量感があります。中域は音階の表現に明瞭さが感じられ、高域は金属的な音の硬い質感の描写をストレートに感じます。音場は縦方向が近く、横に大きく広がりを感じます。ボーカル曲を聴くと何のフィルターも無く目の前で歌っているような、むき出しの声を感じます。
ですが、どこか音楽に没頭できない感覚もありました。プロのオーディオインターフェースの音を持つADI-2 DACに繋いでいるからでしょうか。とても客観的で音楽ではなく音を聴いているようです。しかし、この組み合わせは非常に分析的に聴く良さを感じます。
機器を変えて聴いてみます。
SENNHEISER「HDV 820」では少し落ち着いたトーンに感じられ、響きの表現が伸びやかになりリラックスして聴こえます。ハキハキとした音の立ち上がりはあまり変わりませんが、中高域以上は丸くなりよりなめらかな表現に感じました。音場に関しては思ったほどの変化はなく、横方向に少し広がる印象でした。
また付属の4.4mmバランス接続でも聴いてみました。全体の印象や音場は大きく変わりませんが、音がよりなめらかに柔らかく感じました。比較するとアンバランスでは少し中央に定位が集中することで音の立ち上がりが重なりアタックや密度が強く感じるのに対して、バランスでは定位がまんべんなく広がる印象です。リスニングとして聴きやすくなるので、ぜひ試聴の際にはお試しください!
他にも複数の機器(レビュー下部に記載)に繋いで聴いてみました。音場の広さは奥行き方向はほぼ変わらず、横方向に少し伸びます。そのほかの質感、特に音の余韻の表現は上流の音に対してとても素直に変化するヘッドホンでした。
音場は広く解像度を詳細に引き出すという仕事を忠実にこなす真面目な音作りと、そこに凝り固まり過ぎず、時に躍動的に静的に表現する柔軟さが「YH-5000」の魅力です。機会があれば、ぜひ聴いてみてください!
使用機器:QPM/HDV 820/ADI-2 DAC FS/Tradutto & CH-AMP
量感イメージ
このスタッフの他のレビュー
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AKIRA
@e☆イヤホン 秋葉原店
Brise Audio
NAOBI-Ultimate
2pin 4.4mm 5極 L字
¥125000 税込
最高の音を抜群の取り回しで
Brise Audio「ULTIMATEシリーズ」の高い解像度と立体感を持ちつつ音のつながりが良いなめらかな表現は、NAOBI ULTIMATEでも体感できました。なおかつ柔軟でタッチノイズも少ない、取り扱いのしやすさも合わせ持ちます。 【外観、取り回し】 プラグ、コネクタ、ケーブルスライダーはいずれもOFC削り出しの金メッキ加工が施されており、かなりの高級感を感じさせます。スライダーはケーブルに合わせてスリムに作られているため、重量感を感じるほどではありません。従来のNAOBI同様に細く適度な柔らかさを持っているため、服などに当たってもタッチノイズは気になりませんでした。 【音質】 高い解像度を持ちつつ、音のつながりが良い上質な質感が感じられます。その上でこれまでのNAOBIシリーズ同様の特徴も感じられます。 NAOBI-LEでは、レンジの広さは控えめな少しタイトで繊細な鳴らし方と、量感は控えめながら芯を捉えた低域に明瞭な中〜高域が印象的でした。ニュートラルな音色と透明感が魅力に感じます。 NAOBI Ultimateでは、そうした特徴に音像の立体感と厚みが加わりました。明瞭でありながら音の輪郭にささくれ立った印象がなく、小気味良い響きになんとも言い難い中毒性を感じさせます。全体の帯域バランスこそ大きくは変わりませんが、ダイナミックレンジが広くなり柔らかい音のニュアンスが出てきたことで、より生々しい音になっていると思います。 音質にはこだわりたいけど取り回しも犠牲にしたくないという方、試さない手はないです。ぜひ聴いてみてください。
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AKIRA
@e☆イヤホン 秋葉原店
SHANLING
M3 Ultra
ブラック
¥64683 税込
ES9219Cの扱いに長けたSHANLINGだから出せる音
最低限の高域が出つつ低〜中音域を重視する方にオススメです!やや奥行きのある音場感は元気がありつつも、うるさくは感じにくい聴きやすさがあります。 【外観】 筐体設計は同社「M6 Ultra」などにも採用されたアルミニウム-マグネシウム合金を切削加工で作られています。滑らかな仕上がりで手の収まりも良いです。 【音質】 豊かな情報量を持ちつつ暖かみのある音質です。元気なノリの良さがあるのに耳触りが良く聴きやすさがあります。 バンドサウンドを聴くとバスドラムの押し出し感に心地よい音圧を感じます。音に密度があり定位の良さを感じますが、輪郭には丸みがあり硬い印象にはなっていません。 シンバルなどの高域表現は鮮やかですが、やや距離が遠く感じます。音の分離感は備えているので聴き分けに苦労はありませんが、控えめに感じる点は好みが分かれそうです。 ボーカルラインは適度な距離感で情報量の豊かさを感じます。適切なトーンでアーティストの声を自然に感じられる安心感があります。 オーケストラを聴くと横の広がりにはやや狭さを感じますが、迫力と豊かな余韻が感じられハーモニーがキレイに感じました。 個々の音を分離して聴くよりも、全体のまとまりが上手く表れているタイプだと思います。 情報量や迫力がありノリ良く聴ける要素を持ちながら、暖かみのあるオールジャンルなサウンドです。 ぜひこの絶妙なチューニングを店頭でも聴いてみてください!
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AKIRA
@e☆イヤホン 秋葉原店
Austrian Audio
The Composer
¥396000 税込
圧倒的にレスポンスが良く素直な音。
低域から高域まで圧倒的なレスポンスの良さを持ち、滲む事がありません。開放型の中では低域の量感が多く、中低域のアタックにもパワーが乗る印象です。 ロックやポップ、アニソンなど比較的何でも合う印象ですが、ライブ音源よりも収録された楽曲がオススメです。音数やスピード感、楽器、声、またそのバランス全体に忖度せず素直な音を求める方にオススメのヘッドホンです。 【外観】 全体が金属製で剛性の高さが伺えます。とはいえ無駄を感じさせないスリムなパーツで組み上げられており、期待通りの軽さがあります。 またComposerにはサイズ調整のアジャスターだけでなく、個々人の頭部形状に合わせたハウジングの角度調整の機構も備えています。洗練された機能美を持つヘッドホンだと思います。 【装着感】 イヤーパッドは比較的大きめで、多くの方の耳をすっぽりと覆えると思います。アジャスターは6段階、ハウジングの角度は4段階で調整でき、スイートスポットは狭い印象なので、試聴の際は細かなサイズ調整をオススメします。 【音質】 どの帯域にもレスポンスの良さを持ちつつ、余韻がとても伸びやかな余韻です。硬く締まりのある音だけではなく、柔らかい音や倍音成分も幅広く表現する懐の深さがあります。また低域のレスポンスの良さは特徴的で、低域の深い部分もボワつく事なく繊細に感じられます。 また、中低域のアタックも明瞭で、弦の弾く音やドラムの打ち込みの音圧感がストレートに感じられます。どの帯域もヘッドホン固有の量感や表現でマスクせず、音源の特徴をしっかりと出してくれます。声の表現も感情を込めた部分の力強さや抑揚も非常にストレートに感じられます。 また音量によるサウンドバランスの変化が少なく、低音量でも細かなニュアンスが潰れません。大きい音が苦手な方も、最適な音圧で楽しめると思います。 【HD 800Sとの比較】 比較してComposerの方が音が近く、低域部分の量感の多さとレスポンスの良さが特徴的に感じられます。 HD 800Sは低域に奥行きや広がりを感じつつ中高域には明瞭さがあり、広い空間の中に楽器や声が映える印象です。Composerは適度に近い距離感で、音の細かなニュアンスを正確に捉えることを重視した印象です。 使用機器 iPhone15Plus、RME 「ADI-2 DAC」、JR SOUND「HPA-203」、K9 Pro ESS 試聴楽曲 あたらよ「僕は…」 星街すいせい「Stellar Stellar」 電気式華憐音楽集団「prima dynamis」 Fourplay「Bali Run」 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&カスロス・クライバー「I. Allegro moderato」
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AKIRA
@e☆イヤホン 秋葉原店
iFi-Audio
iCAN Phantom
¥660000 税込
残響感まで伸びよく表現する洗練された音
【外観/操作感】 アンプを上下に重ねたようなデザインですが、一体となっています。ちょうどPro iDSD&Pro iCANセットを重ね置きしたのと同程度の高さがあります。 X BassやX Space、ゲイン調整などの各機能は本体のみで操作が完結できます。もちろんリモコンでも操作可能。またボリュームノブにモーターが内蔵されていてリモコン操作で物理的に回転するのがとてもユニークです。 また静電型の各種ヘッドホンを駆動するための機能も内蔵しています。5ピンソケットSTAXの前世代モデルに対応した230Vのノーマル・バイアスの他、STAX/HIFIMAN/AUDEZEなど静電型の各種製品に対応します。本体背面に収納されているアンプカードを切り替える事で使用できます。カード自体に対応するメーカーor機種が記載されていて分かりやすくなっています。 【音質】 ソリッドステートモードでは、分離感の良さやレンジの広さがあり、音同士の質感の描き分けがより自然に感じました。硬さはあまり感じないものの一音一音を伸び伸びと表現し、音数が多くてもしっかりと聴き分けられる透明感の高さがあります。ADI-2単体と比較して上下に定位が広がるようになり、明瞭さでありつつ聴きやすい音作りに感じました。 Tubeモードでは、少し音がまとまり各音の繋がりの良い音になりました。分離感や定位の良さは失われておらず、ほんの少しだけ滑らかさが欲しい時に適度に効いてくれます。少しだけまとまりの良い音になりパンチも出てきました。 Tube+モードでは、さらに音のまとまりが良く倍音がより強く感じられるようになりました。細かい音の聴き分けよりもボーカルの艶感や響きの余韻が綺麗に表れ、音の要所や全体感を楽しめる音傾向になりました。輪郭も丸くなり過ぎる印象はなく、十分な解像度は持っています。 【STAX SRM-T8000との比較】 T8000では、パワフルで解像度が高い鮮やかなサウンドで、より臨場感高く音楽を楽しむ事ができます。細かい音、厚みのある音もしっかりと描き分け、じっくりと音楽を聴き込みたくなります。 Phantomでは、まとまりが良く優しいウォームサウンドで、ゆったりと音楽に没入できます。音のつながりが良く、音楽を全体的に聴くのに適していると思います。 【試聴機器】 DAC:ADI-2 DAC FS(XLR接続) ヘッドホン:HD 800S / THE Composer 【試聴楽曲】 宇多田ヒカル「First Love」、上原ひろみ「ムーヴ(feat.アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップス)」、高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」etc.