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スタッフレビュー詳細

テーマは「豊潤」。音楽の深淵へと誘われるアダルトな実力者。

ゆっくりと目を閉じて音楽に身を任せるとしたら、このまま二度と目を開きたくない…そんな心持ちにさせられた理由を紐解くことで、このイヤホンのレビューとさせていただきます。

まずはその解像度の妙に注目しました。帯域バランスがとても緻密で美しく、過不足のない鳴り方をしており、そこだけに注目すれば、モニターイヤホンのような実力があるように感じます。しかし、それらに見られやすいカラッとした雰囲気はまるでなく、適度に水気を含んだしっとりとしたサウンドが、いい意味で分析的な部分への執着から解き放ってくれました。

音色としてはクール寄りの印象を受けますが、木製素材が使用されている恩恵か、その中でも随所に感じられる暖かみが憎いです。偏りのない中でも低域の印象は比較的強く残ります。ただ、その文言から思い浮かべるような「強さ」ではなく、「重厚感」という表現が相応しいと思います。

他帯域より気持ち後ろに定位していますが、引っ込んでいる感じは少しもなく、それどころか横方向に取られた空間も相まって非常に豊かで存在感があります。
アタック感や物量で攻めるというより深みや響きの印象が強く、非常に滑らかで上質な仕上がりだと感じました。特にコントラバスの鳴り方は、弦に触れた瞬間から放れ際の空気感までしっとりと描写されていてピカイチです。

一方で中高域は、距離は近い一方で刺さりは一切ありません。優しさと明瞭さの両立がお見事です。鳴り出しから鳴り終わりの速度感も絶妙で、管楽器の出だしのスピード感からの消え際の微かな余韻、「スピードのフォール」が雰囲気を演出します。

いわゆる“ボーカルホン”としてもその能力は高く、歌声が近いのに窮屈にならないところが素晴らしいです。全帯域を通して力感で勝負していないことと、声よりも上の高域が更に近めに設定されていることが、圧を感じさせないことに一役買っているのだと思います。

中高域の音の立ち上がりや分離感には目を見張るものがありますが、ソリッドというほど鋭利な感触はなく、かといってもったりねっとりした感じでもないのが絶妙です。適切プラスアルファくらいの湿度感が艶やかで、色気があります。

サウンド全体に余裕があるので見落としそうになりますが、空間は特別広いとは感じません。むしろある程度コンパクトにまとまっているように思えました。それでも、窮屈さがどこにもないので何のストレスにもなりません。例えるなら、小さめのライブハウスで贅沢にジャズを楽しんでいる時のような充実感があります。特別な時間を演出してくれるような鳴らし方で、ワインを合わせたくなるような仕上がりです。

この空間のコンパクトさでこういった感覚になれる音は珍しいのではないでしょうか。緻密な音響設計の賜物と言うべきでしょう。個人的には、広さが控えめなため、生楽器との相性はいいけれど、クラシックよりは中編成くらいまでのジャズがリアリティを持って表現できているように感じました。とにかく弦楽器の深み(立体感)が印象的で、余韻と響きの表現が豊潤で高級感があります。

ここまでジャズなどの生楽器系にばかり言及してきましたが、根本的に解像度が高く、帯域バランスも整っているため、ジャンルによる向き不向きはあまり感じません。

聴いていて気持ちが良いような清々しい切れ味を感じる瞬間もありながら、分析的になっていないのが上手いところです。よって、ロックやポップスの表現力も脱帽です。

ドライバーを複数使い分けることで、分離感と共に音楽の立体感が表現されています。目前でステージが立ち上がり、まるでその只中に自分がいるような感覚にさせられます。そのライブ感の中で、男声ボーカルは艶やかに、女声ボーカルは気持ち良く沁み渡ります。(だいぶざっくり分けました)

帯域ごとの質感が違う面白さが、ここにも顕著に出ているのかもしれません。また、前述の通り各帯域十分な量があり、分離感も十二分なので、音数の多い打ち込み系も凄くいい聴き心地でした。そちらのジャンルは正直不勉強なためあまり馴染みがありませんでしたが、このイヤホンが手元にあればハマってしまいそうだなぁと思わされました。

一方で、バランス感覚に優れているのは間違いなく素晴らしい部分なのですが、上記の質感ゆえ音一発の破壊力には欠けると感じるかもしれません。例えば、重ためのハードロックなどを好む方には、アタック感が不足している可能性があります。そちらの方面がお好きな方はポイント単位での圧力が足りているか、体感していただければと思います。

低域の質量などは十分に担保されていますが、瞬間的な圧力に関しては疑問が残ります。EDMも分離感ゆえに小気味良く気持ち良いですが、もっと暴力的にきてほしい場合は丁寧に鳴りすぎてしまうかもしれません。「もっとくれよ!」となる方もいらっしゃるかも……。これも点の圧力が鍵を握るところかと思われます。

明らかに高域が前にいるというのも、受け取り方次第かと思います。個人的には十分に楽しく満足感のある聴感だったので、ここは完全に「好きな音」次第だと思います。

結びの前に見た目に少し触れますが、店頭でたまたま目にして、デザインがきっかけで試聴される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。それほどまでに独創的且つ高級感のあるデザインで、本機で耳元を飾りたくなります。私はなりました。(初めて聴いた時は完全に見た目から入りました)

ちなみにこれは余談ですが、付属してくるケースが驚くほど大きいです。こう聞いて想像する倍くらいは大きいです。プレイヤーやケーブルも悠々持ち歩けます!のようなレベルではないです。本気になれば小旅行くらいはできそうですので、是非一度検索してみていただきたいです。

総評として、全体のパワー自体が特別高いわけではないけれど、全ての音に確かな芯と繋がりがあるので不足感はありません。それらが抜群の解像度と余韻感で繰り出されるので何を聴いても楽しいし、色っぽいのです。

音楽体験に「高級感・万能感・艶やかさ」をお求めの方は是非一度、ご体感ください。

量感イメージ

  • 近い
  • 広い
  • クール
  • ウォーム
  • 繊細
  • 迫力

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